Nikon S2とは
Nikon S2は、日本光学工業(現ニコン)が1954年12月に発売した35mmレンジファインダーカメラです。
従来のNikon Sから大幅に改良され、標準的な24×36mmの画面サイズ、フィルム巻き上げレバー、巻き戻しクランク、見やすくなったファインダーなどを採用しました。
1958年6月まで生産され、Nikon公式では生産台数は56,700台を少し超えるとされています。資料によっては、56,715台と紹介されることもあります。
Nikon S2は、操作性と耐久性に優れたカメラとして評価され、現在でもフィルムカメラ愛好家やコレクターから人気があります。
Nikon S2の特徴
24×36mmの標準画面サイズ
Nikon S2は、従来のNikon Sで採用されていた24×34mmから、一般的な35mmフィルムと同じ24×36mmの画面サイズへ変更されました。
現在の35mmフィルムカメラと同じ画面サイズになったことで、より使いやすくなっています。
フィルム巻き上げレバーを採用
Nikon S2は、ニコンのレンジファインダーカメラとしてフィルム巻き上げレバーを採用したモデルです。
巻き上げノブを回す方式と比べて操作性が向上し、連続撮影を行いやすくなりました。
また、巻き戻しにはクランクが採用され、フィルム交換時の操作性も改善されています。
高精度な機械式シャッター
Nikon S2は、電池を必要としない機械式シャッターを搭載しています。
シャッター速度は1秒から1/1000秒、T・Bにも対応しています。
シャッター幕にはゴム引き布幕が使用されているため、長期間保管されていた個体では、幕の劣化やピンホールに注意が必要です。
見やすく改良されたファインダー
Nikon S2は、従来モデルと比べてファインダーの倍率や視認性が改良されています。
ファインダー倍率は約1.0倍で、両目を開けたまま撮影しやすい設計です。
ただし、ファインダー内部の曇りやカビ、二重像のズレがある場合は、査定額に影響することがあります。
Nikon S2の買取相場
Nikon S2 シルバー(ブラックダイアル)
| 状態 | 一般買取店 | バイカメ |
|---|---|---|
| 並品 | 15,000~20,000円 | 20,000~25,000円 |
| 美品 | 20,000~25,000円 | 25,000~30,000円 |
Nikon S2 ブラックペイント(オリジナル)
| 状態 | 一般買取店 | バイカメ |
|---|---|---|
| 並品 | 100,000~200,000円 | 200,000~300,000円 |
| 美品 | 200,000~300,000円 | 400,000~500,000円 |
※ブラックペイント仕様は、オリジナル塗装かどうか、塗装の状態、シリアル番号、付属レンズの種類によって査定額が変わります。
Nikon S2 ブラックペイントの製造番号|オリジナルブラックを見分けるための資料と既知シリアル
Nikon S2には、通常のクローム仕上げとは別に、非常に希少なブラックペイント仕様が存在します。現在の中古市場では後年のリペイント品も見られるため、「黒いS2だからオリジナル」と判断することはできません。
オリジナルブラックを調べるうえで重要な資料の一つが、Robert J. Rotoloni(ロバート・J・ロトローニ)がNikon Historical Society(NHS)の機関誌『Nikon Journal』で長年更新してきた「Black Body List」です。
Robert J. Rotoloni、NHS、Nikon Journalとは
Robert J. Rotoloniは、Nikonレンジファインダーカメラの歴史研究で知られるコレクター・研究者です。Nikon Historical Society(NHS)はNikonの歴史的製品を研究する独立した団体で、ニコン株式会社そのものの公式部門ではありません。
NHSの機関誌が『Nikon Journal』です。Pacific Rim CameraのReference Libraryでは、1983年のNHS-1から多数の号がPDFで公開されています。
2002年9月のNHS-77には、Rotoloniが30年以上にわたり集めたブラックNikonレンジファインダーのシリアル番号をまとめた「Official Nikon Historical Society Black Body List」が掲載されています。本文では、本人が実見した個体や多数の情報源から報告を受けた個体を蓄積し、当時540台を「original and correct」として整理したと説明しています。
Nikon S2ブラックは連続した一つの番号帯ではない
Nikon S2のブラックペイントは、単純に「618万番台ならブラック」というものではありません。NHSの更新資料では、複数の生産ロットが推定されています。
2011年のNHS-113で示されたS2ブラックの主なRecorded Range(確認された範囲)とEstimated Range(推定生産範囲)は以下の通りです。
| ロット | Recorded Range | Estimated Range | 推定台数 |
|---|---|---|---|
| 1 | 6140804–6140848 | 6140801–6140850 | 約50台 |
| 2 | 6144454–6144496 | 6144450–6144500 | 約50台 |
| 3 | 6144520–6144574 | 6144520–6144600 | 約80台 |
| 4 | 6144662–6144689 | 6144650–6144700 | 約50台 |
| 5 | 6157502–6157588 | 6157501–6157600 | 約100台 |
| 6 | 6170901–6170997 | 6170901–6171000 | 約100台 |
| 7 | 6180596–6180987 | 6180575–6181000 | 約425台 |
| 8 | 6194001–6194297 | 6194001–6194300 | 約300台 |
Rotoloniは、この8つの主要ロットだけで約1,155台と推定しています。ただし、主要ロットから外れた孤立した確認例も存在するため、「ロット外=必ずリペイント」とも断定できません。
618万台のブラックペイント
特に中古市場で目にする機会が比較的多いのが、618万番台の後期ブラックです。
NHS-77には、たとえば次のような個体番号が掲載されています。
6180604、6180623、6180643、6180659、6180661、6180663、6180666、6180683、6180701、6180734、6180754、6180758、6180773、6180776、6180784、6180793、6180805、6180816、6180827、6180866、6180886、6180910、6180915、6180923、6180937、6180947
その後のNikon Journalでも番号は追加され、2011年の更新時点ではRecorded Rangeが6180596–6180987まで広がっています。
製造番号だけでオリジナルと断定してはいけない
シリアル番号は重要な判断材料ですが、それだけで真贋を確定することはできません。
Nikon JournalのBlack Body Listには、Original側の番号とは別にFake(リペイント等)として記録された番号もあります。したがって実機では、シリアル番号に加え、塗装の経年変化、エッジ部分の真鍮の出方、刻印部分の塗膜、ネジやダイヤルの仕様、貼り革、各部品と製造時期の整合性などを総合的に確認する必要があります。
また、Recorded RangeとEstimated Rangeも区別する必要があります。
Recorded Rangeは、Rotoloniのデータベースで実際に確認例が存在する範囲です。一方、Estimated Rangeは確認された個体から推定した生産ロットです。そのため、Estimated Range内に番号が入っていることだけを理由にオリジナルと断定することはできません。
参考資料
Nikon Historical Society Journal Archive
https://www.pacificrimcamera.com/rl/rlNikonNHS.htm
Nikon Journal NHS-77(2002年9月、Black Body List)
https://www.pacificrimcamera.com/rl/03683/03683.pdf
Nikon Journal NHS-90(2005年更新版)
https://www.pacificrimcamera.com/rl/03998/03998.pdf
Nikon Journal NHS-113(2011年、Black Body List更新版)
https://www.pacificrimcamera.com/rl/04295/04295.pdf
Nikon Journal 後年追加資料(6140847、6194117等)
https://www.pacificrimcamera.com/rl/03773/03773.pdf
Nikon Journal BLACK & BEAUTIFUL! 追加資料(6180884、6194158等)
https://www.pacificrimcamera.com/rl/03981/03981.pdf
L&H Auction Nikon S2 Black Paint #6180696
https://lhauction.com.hk/en/catalogue/detail?id=2620
Nikon S2に組み合わせられる人気レンズ
Nikon S2には、専用のNikon Sマウントレンズを装着できます。
代表的なレンズには、以下のようなモデルがあります。
- NIKKOR-S.C 5cm F1.4
- NIKKOR-H.C 5cm F2
- NIKKOR-P.C 8.5cm F2
- NIKKOR-P.C 10.5cm F2.5
- W-NIKKOR 3.5cm F1.8
- NIKKOR-N 5cm F1.1
特に大口径の標準レンズや、希少性の高い広角・望遠レンズが付属している場合は、ボディ単体よりも高く評価される可能性があります。
Nikon S2が高く評価される理由
ニコンを代表するレンジファインダーカメラ
Nikon S2は、ニコンの初期レンジファインダーカメラの中でも、操作性と完成度のバランスに優れたモデルです。
後のNikon SPやNikon Fにもつながる技術が取り入れられており、ニコンのカメラ史においても重要な存在です。
生産台数が多い人気モデル
Nikon S2は、ニコンのレンジファインダーカメラの中では生産台数が多く、約56,700台以上が製造されました。
そのため、Nikon SやNikon S3などと比較して市場で見かける機会はありますが、状態の良い個体や付属品が揃った個体は少なくなっています。
ブラックペイントは希少性が高い
Nikon S2には、シルバークロームだけでなくブラックペイント仕様も存在します。
ブラックペイントの正確な生産台数については公的な記録が確認されておらず、約450台から約1,000台程度とする説があります。
正確な台数は不明ですが、通常モデルと比べて流通数が少なく、コレクターから注目されている仕様です。
また、ブラックペイントには前期型・後期型があり、ダイヤル周辺の仕上げなどにも違いが見られます。
海外需要がある
Nikon S2は、日本国内だけでなく海外のフィルムカメラ愛好家やコレクターからも評価されています。
特にブラックペイントや、希少なNIKKORレンズ付きの個体は海外市場でも需要があります。
そのため、国内相場だけでなく海外市場の動向も査定額に影響します。
Nikon S2の査定で確認されるポイント
ボディの外観
ボディの傷やへこみ、塗装の状態、革張りの劣化などを確認します。
ブラックペイントの場合は、塗装の剥がれが見られる個体でも、オリジナル塗装であればコレクション価値が評価されることがあります。
シャッターの動作
シャッターが切れるか、速度を変更できるか、シャッター幕が正常に走行するかを確認します。
低速シャッターの粘りやシャッター幕の劣化がある場合は、査定額が下がることがあります。
ファインダーの状態
ファインダー内部の曇り、カビ、汚れ、二重像のズレを確認します。
ファインダーが明るく、二重像で正確にピントを合わせられる個体は評価されやすくなります。
巻き上げ・巻き戻しの動作
巻き上げレバーが正常に動作するか、フィルムカウンターが作動するか、巻き戻しクランクに問題がないかを確認します。
レバーが重い場合や途中で止まる場合は、内部機構の整備が必要になることがあります。
レンズの状態
レンズ付きの場合は、以下の項目を確認します。
- レンズのカビ
- 曇り
- 傷
- バルサム切れ
- 絞り羽根の油染み
- ヘリコイドの動作
- 絞りの動作
希少なSマウントレンズや状態の良い大口径レンズは、レンズ単体でも高く評価される場合があります。
Nikon S2で注意したい不具合
シャッター幕の劣化
ゴム引き布幕は、経年によって硬化やシワ、ピンホールが発生することがあります。
光線漏れがある場合は、修理を前提とした査定になる場合があります。
シャッター速度の不安定
シャッター速度を変更しても速度が変わらない、低速だけ動作しない、シャッターが切れないなどの症状が見られることがあります。
ファインダーの曇り・カビ
長期間保管されていたNikon S2では、ファインダー内部に曇りやカビが発生していることがあります。
二重像が見えにくい場合や、ピント合わせが難しい場合は査定に影響します。
二重像のズレ
レンジファインダーの二重像がズレていると、正確なピント合わせができません。
調整によって改善できる場合もありますが、修理が必要になることがあります。
巻き上げ不良
内部のグリス固着や部品の摩耗によって、巻き上げレバーが重くなる場合があります。
無理に操作すると故障が悪化する恐れがあるため、異常を感じた場合は無理に動かさないことをおすすめします。
Nikon S2はどこで売るべき?
フリマアプリ・オークション
メルカリやヤフオクでは、コレクターへ直接販売できる可能性があります。
一方で、動作確認や商品説明、梱包・発送、購入後の問い合わせ、返品対応などを自分で行う必要があります。
リサイクルショップ
一般的なリサイクルショップでは、Nikon S2の歴史的価値や、ブラックペイントの希少性が十分に評価されない場合があります。
専用レンズの価値を判断できないケースもあるため、注意が必要です。
カメラ専門店
カメラ専門店では、以下の項目を総合的に確認して査定します。
- ボディの状態
- シャッターの動作
- ファインダーの状態
- ブラックペイントの希少性
- オリジナル塗装かどうか
- シリアル番号
- 付属レンズの種類
- 国内外の中古相場
Nikon S2の価値を正しく評価してもらうためには、フィルムカメラやレンジファインダーカメラに詳しい専門店がおすすめです。
バイカメのNikon S2買取
バイカメでは、Nikon S2をはじめとするニコンSシリーズのレンジファインダーカメラを積極的に買取しています。
以下のような状態でも査定可能です。
- Nikon S2 シルバークローム
- Nikon S2 ブラックペイント
- ボディのみ
- レンズ付き
- シャッター不良
- ファインダーの曇り・カビ
- 二重像ズレ
- 巻き上げ不良
- シャッター幕の劣化
- 動作未確認
- 元箱・付属品なし
NIKKOR-S.C 5cm F1.4やNIKKOR-H.C 5cm F2、NIKKOR-P.C 10.5cm F2.5などのSマウント用レンズも査定いたします。
LINE査定では、カメラやレンズの写真を送るだけで、おおよその査定額をご案内しています。
Nikon S2についてよくある質問
Q. Nikon S2は高く売れますか?
Nikon S2は、ニコンを代表するレンジファインダーカメラの一つで、現在でも需要があります。
状態の良い個体や、人気のNIKKORレンズが付属している場合は、高く評価される可能性があります。
Q. Nikon S2 ブラックペイントは高額査定になりますか?
ブラックペイントは流通数が少なく、通常のシルバーモデルより高く評価される場合があります。
ただし、オリジナル塗装かどうか、状態、シリアル番号、レンズの有無によって査定額は変わります。
Q. Nikon S2は故障していても売れますか?
はい。シャッター不良、ファインダーの曇り、二重像ズレ、巻き上げ不良などがある場合でも買取可能です。
状態を確認したうえで査定いたします。
Q. レンズがなくても買取できますか?
はい。Nikon S2はボディのみでも買取可能です。
ただし、人気のNIKKORレンズが付属している場合は、セットで査定額が高くなることがあります。
Q. 箱や説明書がなくても買取できますか?
もちろん買取可能です。
元箱、説明書、純正ケース、レンズキャップなどがある場合は、査定時に一緒にお出しください。
まとめ
Nikon S2は、1954年12月に発売され、1958年6月まで生産されたニコンの代表的なレンジファインダーカメラです。
約56,700台を超える生産台数を誇り、操作性や耐久性に優れたモデルとして、現在でも高い人気があります。
通常のシルバークロームモデルだけでなく、ブラックペイント仕様や希少なNIKKORレンズ付きの個体は、コレクター需要によって高額査定となる可能性があります。
シャッター不良やファインダーの曇り、動作未確認などの状態でも買取できる場合がありますので、処分する前にカメラ専門店へご相談ください。
この記事を書いた人
木下 雄一(バイカメ代表)
大阪市北区で中古カメラ専門店「バイカメ」(株式会社CHC)を運営。 年間1,000台以上のカメラ・レンズを査定し、フィルムカメラ・ライカ・Nikon Fシリーズ・オールドレンズなどを中心に買取を行っています。 海外40か国以上への販売実績があり、国内外の中古市場を踏まえた査定を行っています。